ノモンハン 隠された「戦争」 (NHKスペシャルセレクション)

ノモンハン 隠された「戦争」 (NHKスペシャルセレクション) の詳細

ノモンハン事件は日本の侵略戦争のひとつであり、悪いのは日本軍である。という考え方で貫かれている本である。1990年代に入り、ロシア軍事史公文書館の機密資料が公開され、それまでベールに包まれていたソ連軍の被害状況が、概要とはいえ分かるようになった。それによると、ソ連軍の死傷者は2万4千人ほどになる可能性もある。ちなみに日本軍の死傷者は約1万8千人である。「これが日本とソビエトの痛み分けであった、という議論にはならない（略）それだけの人間を日本側も傷つけ殺した、ということである。」と著者はいう。この著者の言葉に、「確かに、その通りだ」と思う方もいるのであろう。いろいろな考え方があっていいのだが、どうして、これほど歪んだ見方ができるのか、私には理解できない。昭和14年、国境を侵犯したソ連に対し、日本軍は1個師団を差し向けて、これを追い払おうとした。その国境付近にはソ連軍10個師団が戦闘態勢を整えていたのである。この状況を見れば、どちらが仕掛けた戦いか、明白ではないだろうか。10分の1の兵力で、日本軍がソ連軍の侵攻を食い止めたというのが、公開されたソ連の極秘資料から、自然に導き出される答えだと私は思う。ちなみに被害数は下記の通りである。兵員日本18,000人ソ連24,000人航空機日本77機ソ連1,673機戦車日本29台ソ連800台以上ロシア軍事史公文書館の機密文書を閲覧する機会に恵まれた著者には、もっと公正な目で、資料を調べ、取材をしてほしかった。